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トポロジー最適化

構造物の最適な形状を力学的根拠に基づいてコンピュータにより自動的に求める方法論があり、構造最適化と呼ばれています。図1に示すように、構造最適化法は、設計自由度の観点から「寸法最適化」、「形状最適化」、「トポロジー最適化」に大別できます。この中で、トポロジー最適化は最も設計自由度の高い方法であるため、非常に高い性能を持つ設計案や、設計者が思いつかないような設計案を創成することができます。これまでに、独自の方法論として、「レベルセット法に基づくトポロジー最適化」を提案し、従来の方法論の問題点の本質的な解決に成功しました。レベルセット法に基づくトポロジー最適化は、株式会社くいんと様の「HiramekiWorks」の機能として実装され、SolidWorksのアドオンとして利用が可能になりました。

図1 左端を固定、右端中央下向きに荷重が負荷された片持ち梁に対して各構造最適化法を適用した場合のイメージ

図2 レベルセット法に基づくトポロジー最適化を機械構造部品の設計問題に適用した場合

これまでの展開実績として、「アクチュエータの設計」、「航空機翼の設計」、「共振周波数最大化」、「規定された複数の共振周波数を持つ構造物の設計」、「負のポアソン比を持つ周期構造材料設計」、「熱交換器の設計」、「誘起電荷電気浸透流を利用した流路の設計」、「太陽光発電フィルタの周波数選択構造」、「電磁クローキング構造の設計」等を行ってきました。
しかしながら、いずれも単一のデバイスや材料構造の設計等の設計における下流の設計フェーズへの展開に留まっており、機械システム全体を考慮した設計に至っていません。今後は、各設計フェーズを考慮したマルチフェース設計論をはじめとして、機械システム全体の創成が可能な基礎理論の構築に取り組んでいます。

主な研究論文

  • ●レベルセット法に基づくトポロジー最適化
    Comput. Meth. Appl. Mech. Eng., (2010) 199(45-48), pp. 2876-2891. DOI. Preprint.

トポロジー最適化の枠組を超え、機械システムの創成へ

トポロジー最適化はデバイスや材料の形状に着目し、その形状を力学的根拠に立脚して最適な形状を創成設計する方法です。その基本的な枠組は、連続体力学による状態変数の数理解析に基づいているため、ロボットや自動車などの機械システム全体を設計対象にすることが基本的にはできません。当研究室では、このような基本的な枠組の限界を突破することを目指して、機械システムを模擬する数理モデルを提案し、機械システムの創成設計法の構築を目指しています。

リンク機構のトポロジー最適化(赤色:リンク、青色:ジョイント)

力学と設計生産の架け橋となる学理の構築

トポロジー最適化では、物理的根拠に立脚した設計解を創成できるものの、複雑な部分構造を持つ設計解が得られる場合が多い。そのため、製造工程や組立工程等を考慮した場合、トポロジー最適化により得られる設計解は、工学的に適切な設計解ではなく、工学的観点からは最適設計解とは言えない。本研究室では、工学的観点からも最適と言える設計解を創成する方法論を構築するために、「設計生産に関する幾何学数理モデルの構築と設計生産システム最適化」及び「多様な設計フェーズ及び生産要件に対する数理モデルの開発」を行っています。

型による成形を前提としたトポロジー最適化

図3 組立性を考慮した複数部材トポロジー最適化
金属積層造形を前提とした最大傾斜角を考慮したトポロジー最適化
金属積層造形を前提とた閉孔排除制約付きトポロジー最適化

主な研究論文

  • ●型による製造性を評価する仮想的な物理モデル
    Int. J. Adv. Manufact. Tech., (2017) 92(1-4), pp. 1391-1409. DOI. Preprint.
  • ●幾何学的特徴に対する数理モデル
    J. Comput. Design & Eng., (2019) 6(4), pp.647-656. DOI.
  • ●閉孔排除制約
    Additive Manufacturing, (2022) 52, p.102630. ArXiv. DOI.

常識を超えるデバイス機能と新奇な材料特性の探求

近年、メタマテリアルと呼ばれる自然界に存在する均質材が示さないような特異な特性を示す人工材料が注目されています。

本研究室では音波や弾性波を中心とした波動伝搬問題や、熱伝導問題、流体問題等の幅広い物理現象を対象とし、これまでにない機能やメカニズムを示すメタマテリアルの創成を行っています。このために、メタマテリアルの性能を効率的に評価可能な均質化法を中心としたマルチスケール解析法を導入し、トポロジー最適化を行っています。

負のポアソン比を持つ材料構造の創成設計例
音響メタマテリアルの創成設計例
迷路型音響メタマテリアルの創成設計例
全方位クローキングの実現

主な研究論文

  • ●縦波横波変換構造
    Appl. Phys. Lett., (2015) 107(22), p. 221909. DOI. Preprint.
  • ●双曲型音響メタマテリアル
    Comput. Meth. Appl. Mech. Eng., (2018) 335, pp. 419-471. DOI. Preprint.
  • ●分子気体効果による熱駆動ポンプ
    J. of Comput. Phys., (2019) 395(15), pp. 60-84. DOI. Preprint.
  • ●光クローキング
    Appl. Phys. Lett., (2013) 102(25), p. 251106. DOI. Preprint.